
東京都知事選について、様々な考察がされています。こうした中で、注目したいのはやはりSNSの活用と選挙のあり方です。いわゆる「ネット選挙」が2013年に解禁となって、11年が経過した中での今回の都知事選があり、わたしは、その影響が初めて大きく投票行動に表れたのではないかと考えています。様々な意見があることや、政策や主張については無視をしたうえで、今回の都知事選での石丸伸二氏の「戦術」をもとに考えてみることにします。
動画再生回数から考える秘策
NHKの報道によると、小池・蓮舫・石丸の3名の動画アクセス数は、石丸氏が86万回、小池氏2.1万回、蓮舫氏2.8万回と、大きな差があることがわかります。また、告示日以降に石丸氏のYoutubeのチャンネル登録者数が13.4万人増加していることがわかります。
こうした動きの背景には、Youtuberの存在があったといいます。Youtuberが「再生数を稼げる(=儲かる)」と、石丸氏の選挙活動を「コンテンツ化」し、熱狂的に発信することで、再生回数が伸びたと考えることができます。また、こうすることで、SNS内で石丸氏をよく見かけるようになったり、トレンド入りしたりして、大きな存在となったと考えられます。いわば、アイドルの「推し活」と同じ論理で、候補本人や政党・陣営自身が発信するのではなく、有権者ひとりひとりが「推し活」的に発信することで、候補本人から見れば、ひとりでに情報は発信されるようになり、結果として得票数に結びついたと考えられます。
「聴衆の集中力がもたない」
石丸氏の選対事務局長で、選挙プランナーの藤川晋之助氏の発言として、演説の時間の長さの特長が報道されています。
1カ所の演説は20分までと短く、「それには石丸氏の強い意思がある。それ以上は聴衆の集中力が持たないからだ」。数を重ねて顔を覚えて興味を持ってもらい、じっくりとした話はユーチューブなどでみてもらう。「全体で10万人余りがこの間聴衆でみにきてくれた。その間に200万人ぐらいの人が(ネットで)いろんな演説を聞いているわけです」。
https://www.sanspo.com/article/20240707-T6UK7J6CFVMMFDNNOZTROYAUEA/
選挙戦の投票日前日20時前の、いわゆる「マイク納め」の演説をYoutubeで見ることがあります。選挙の大きさを問わず、マイク納めの演説動画は一般的に「長い」と感じることが多くありませんか?
応援演説が続き、候補本人が締めに話すという流れが一般的で、コンテンツとして見たときに、確かに飽きます。いまどきの若者は、短い動画を倍速にして見るといいます。こうした「イマドキの動画を見る作法」に照らすと、先の「1カ所の演説は20分」というくだりは理にかなっています。
平成以降2番目の投票率に見る「わかりやすさ」
今回の都知事選の投票率は60.62%。平成以降では2番目の高さだったといいます。これには、立候補者の乱立をはじめとする様々な要因が複雑に絡んでいるなど、ここまで触れてきた「ネット選挙」だけの効能ということはできないでしょう。
一方で、ネット選挙によるSNS戦略が爆発的に浸透したという表れには、「わかりやすさ」があることは間違いありません。改めて、その「わかりやすさ」の内容の是非には触れませんが、キャッチーなフレーズや、かんたんなことば(平易な文章)、聴衆の感情を揺さぶるアピールがあったのは言うまでもありません。
これは、教職員組合運動に生かすことができるものです。

先日のX(旧Twitter)を活用した中教審「審議のまとめ」のアピール行動の際には、「給食時間は休憩時間ではない」や「メリハリある桃太郎」が"わかりやすい"と好評だったように、専門用語や業界用語を使わずかんたんな言葉でアピールするということが、これからの時代に求められていることが証明されたと言えるでしょう。
今回の選挙戦は、私たちがもっている価値観をどんなふうに広げ、共感を得ていくのか、常々考えていることと極端にマッチして考えさせられる出来事だったというのは間違いありません。
